がんと診断されて、 会社の退職を考えているあなたへ。
「迷惑をかけたくない」——その気持ちはよくわかります。でも、正しい情報なしに決断する必要はありません。治療しながら働き続けられる人は、確かにいます。
「人手不足なのに穴をあけてしまう」「上司に申し訳ない」——そう感じているあなたに、まず知ってほしい事実があります。あなたが一番避けたい『会社への迷惑』。実は、何の準備もなく今日明日で穴が開くことが、現場にとっては最も対応が難しい事態です。
思い出してほしいのですが、これまで働いている時に病欠や有休などで職場の人員が減ったとき、仕事の負担が増えませんでしたか?
急に職場から人が減るのは大変なんです。
ですが驚くべきことに、がんで退職した人の半数以上(56.8%)が、治療が始まる「前」に退職の決断をくだしています。出典:厚生労働省 委託事業「がん患者の就労支援に関する調査」
つまり、「どのくらい休む必要があるか」「今の仕事が続けられるか」という正確な情報が揃う前に、不安と申し訳なさだけで辞めてしまっているのが現状です。
多くの人がこの段階で決断し、あとから「もう少し待てばよかった」と後悔しています。あなたには、その56.8%に入ってほしくない。だからこそ、今だけは立ち止まってください。
あなたの責任感は素晴らしいものですが、治療の見通しが立たない段階での決断は、あなたの将来の選択肢(経済的権利やキャリア)を奪ってしまう可能性があります。
なぜ「治療が始まる前」の退職は、リスクなのか?
がんの診断直後は「パニック」に近い状態にあります。この時期に下す決断がリスクとなる理由は主に3つです。1. 情報不足による誤った判断
- 「フルタイム以外は無理」と思い込んでいるが、時短やテレワークで継続可能な場合が多い。
- 副作用の程度は個人差があり、やってみないとわからない。
2. 経済的な損失(公的保障の喪失)
- 傷病手当金:在職中であれば最長1年6ヶ月受給できますが、退職のタイミングにより受給できなくなるリスクがあります。
- 健康保険:任意継続や国保への切り替えで保険料負担が増える可能性があります。
退職届を出す前に確認すべき「5ステップ・チェックリスト」は?
1.治療計画が確定するまで「保留」する
いつ、どこで、どんな治療をするか。スケジュールが出るまで書類は出さない。これだけで、雇用継続の道が残ります。2.会社の「休暇・休職制度」を調べる
有給の積立制度、病気休職、短時間勤務制度など、就業規則を人事に匿名で問い合わせることも可能です。3.適切な「相談窓口」を見つける
直属の上司が難しいなら人事へ。また、病院内の「がん相談支援センター」も大きな力になります。4.「通院の調整」として相談を切り出す
最初から病名を言わなくてOK。「通院が必要になったため、勤務の調整を相談したい」という事実から伝えましょう。5.「続ける条件」を整理する
「週3日なら」「テレワークなら」など、自分が継続できる条件を提示する準備をしましょう。上司への最初の一文テンプレは?
○○部長、お時間をいただけますか。
少し通院が必要な状況になり、今後の勤務調整についてご相談させていただきたいことがあります。
まずは15分ほど、お話しできる機会をいただけますでしょうか。
※ポイント:病名や治療の詳細は、この時点では伏せたままでも「相談の予約」は可能です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 治療中も、本当に仕事を続けられるのでしょうか?
続けられるかどうかは、治療の種類・職種・職場環境によって大きく異なります。「絶対無理」と決めつけるのも、「絶対大丈夫」と楽観するのも、治療計画が出る前では判断できません。まず主治医に「仕事への影響はどの程度か」を具体的に聞くことが、最初の一歩です。副作用の出方には個人差があり、抗がん剤治療中でも時短勤務やテレワークで続けている方は少なくありません。
Q2. 通院のペースが読めず、会社のスケジュールが立てられません。
多くのがん治療は、投薬サイクルや放射線の照射スケジュールがあらかじめ決まっています。治療計画が出た段階で、「○週に○日通院が必要」という見通しを会社に伝えられるようになります。それまでは「通院調整が必要な状況」とだけ伝え、詳細は計画確定後に相談する段階的な方法が現実的です。
Q3. 体調が悪い日に急に休むことへの罪悪感が強いです。
その感覚は、責任感の強い方ほど出やすいものです。ただ、急な欠勤への対応は、会社側が制度として備えるべきものでもあります。あなたが事前に「体調により急な対応が必要になる可能性がある」と伝えておくことで、上司やチームも心づもりができます。「迷惑をかけないこと」より、「見通しを共有すること」の方が、職場には助かります。
Q4. 治療と仕事の両立について、誰に相談すればいいですか?
まず頼りたいのが、病院内の「がん相談支援センター」です。就労・制度・職場への伝え方まで、無料で相談できます。全国のがん診療連携拠点病院に設置されており、かかりつけ病院以外でも利用できる施設があります。国立がん研究センター がん情報サービスから最寄りの窓口を探せます。
【情報参照元】
![]()
まとめ
がん診断後すぐの退職は待ってください
- がん退職者の56.8%が治療開始「前」に退職を決断しており、多くが後悔している
- 治療計画が出る前の決断は、経済的権利やキャリアの選択肢を奪うリスクがある
治療前退職の2大リスク
- 傷病手当金(最長1年6ヶ月)を受給できなくなる可能性がある
- 健康保険の切り替えで保険料負担が増える
退職届を出す前の5ステップ
- 治療計画が確定するまで保留する
- 会社の休暇・休職制度を調べる(人事に匿名で問い合わせ可)
- がん相談支援センターなど適切な相談窓口を見つける
- 「通院の調整として」相談を切り出す(病名は最初から言わなくてOK)
- 「週3日なら」「テレワークなら」など続けられる条件を整理する
上司への最初の一言 「少し通院が必要な状況になり、勤務調整についてご相談したいことがあります」
相談先
- 病院内のがん相談支援センター(無料・かかりつけ病院以外でも利用可)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がんと仕事」
「辞める」も「続ける」も、正しい情報を得てから決めても遅くありません。
なお、この時期に必要な制度や情報、考え方を記事にまとめています。良ければご確認ください。

がんと診断された。最初の30日間にやること。
制度は自治体・加入保険によって異なります。申請前に必ず管轄窓口で確認してください。本ページの情報は2026年3月時点のものです。本カテゴリーでは便宜上「がん、難病と診断された本人」という立場を例として記述しています。診断を受けたのが自分自身...


コメント